はじめに:中古アパート投資は本当に儲かるのか?
不動産投資の中でも「中古アパート」や「中古マンション」は、
初期費用が抑えられ利回りが高いことから人気を集めています。
しかし、単に「利回りが良さそうだから買う」だけでは危険です。
収入と支出、利回り、そして最終的な出口戦略までを一貫して想定し、事業として数字で判断することが重要です。
この記事では、
中古アパート・マンション投資を検討する際に必要な5つの事業想定ステップを、
実務目線でわかりやすく解説します。
↓新築賃貸マンションに関する記事はコチラから↓
収入想定:現状把握と将来の賃料見通し
まずは「どのくらいの収入が見込めるか」を正確に把握することから始めます。
ポイントは現在の賃料収入をベースに、将来の増減リスクを織り込むことです。
以下ポイントに注意しながら収入の想定を行ってください。
レントロールを確認して現在の年収を把握
レントロール(賃貸明細表)には、各部屋の賃料・契約期間・入居者情報が記載されています。
これを確認することで、現在の年間家賃収入を正確に算出できます。
賃料以外の収入もチェック
自動販売機や駐車場、コインランドリーなど、副収入の有無も確認しましょう。
物件によっては年間数十万円単位で差が出ます。
滞納や長期入居者の賃料を確認
滞納があると安定収入は見込めません。
また、長期入居者の賃料が相場より低い場合は、今後も入居が続き賃料アップが見込みにくいかもしれません。
契約期間はワンルームや1LDKの場合、単身者のため入居期間は短期間に、3LDK以上のファミリー物件は長期間になりがちです。
退去後の入れ替えで賃料アップの余地がないかしっかり確認しておきましょう。
↓入れ替え後の賃料想定に関してはコチラから↓
入退去履歴・空室率を把握
過去の入退去履歴から、入れ替わりの頻度や空室期間を確認します。
地域の賃貸需要やアクセス条件から、将来的な空室率も見込んでおきましょう。
またコチラは支出想定になりますが、入退去が多いほどに原状回復工事の発生頻度も高いということは頭の片隅に入れておきましょう。
支出想定:管理・修繕・税金を見落とさない
次に「どのくらいの支出が発生するのか」を正確に想定します。
収益物件の経費は、小さな積み重ねで利回りを大きく左右します。
管理会社・PM会社の契約内容を確認
BM会社とPM会社が別々になっているか、一体になっているかを確認しましょう。
BM費用は規模感により一般に固定で数万円〜数十万円と変わってきます。
清掃頻度や回数などは見直しによって削減の余地があるかもしれません。
またPM(プロパティマネジメント)費は賃料収入の約4%が目安です。
レポート内容が薄い場合や対応の良し悪しで、他社への切り替えも検討しましょう。
修繕履歴と大規模修繕の確認
築20年以上の物件では、屋上防水・配管・エレベーターなど高額修繕が発生しやすいポイントです。
修繕履歴を確認し、今後の支出を見込んでおくことが大切です。
水道・光熱費と契約形態を確認
入居者個別での契約か、アパート全体契約になっているか確認しましょう。
アパート全体契約で入居者に個別徴収している場合、逆ざや(支払い額が徴収額を上回る)に注意。
逆ざやの場合は、入居者からの徴収額増額や、電力会社の切り替えを検討しましょう。
経常支出の目安は収入の20%
修繕・管理・光熱費・保険・清掃など、経常支出は総収入の20%程度に抑えたいところです。
規模が大きいほど効率化できる場合もあります。
その他の支出項目
・火災・地震保険の加入費
・定期的な原状回復費(クロス・床など)
・固定資産税・都市計画税(固定資産税課税台帳で確認)
利回り算定:NOI利回りで実質収益性を把握
収入と支出を整理したら、NOI(営業純利益)利回りを算出します。
表面利回りよりも現実的な数字が見える指標です。
NOI利回りの算出式
(年間総収入 − 年間支出) ÷ 物件価格 × 100(%)
この数字が実際の運用でどれだけ利益を生むかを示します。
↓利回りに関する詳しい記事はコチラから↓
売り出し価格に含まれる消費税の確認
建物部分には消費税が課税されます。
物件概要書などでは消費税が記載されていないことが多いです。
物件価格は税込価格で利回り計算することで、過小評価を防ぎます。
購入時諸費用も考慮
物件購入価格以外に諸費用も発生します。しっかり購入時原価に含めて正確な物件評価ができます。
・不動産取得税
・登録免許税
・抵当権設定費用
・司法書士手数料
・仲介手数料
これらを購入総額に含めて計算することで、より実態に近い利回りを出せます。
妥当性チェック
利回りを算出したら、妥当性を確認しましょう。
周辺の取引事例、自己投資基準、借入金利などと比較し、
「この利回りで本当に投資する価値があるか」を冷静に判断します。
コチラに関しては明確な基準があるわけではなく、投資家独自の目線によって決められますのでしっかり妥当性を検証していきましょう。
また利回りだけでなく、売却価格を床面積で割り出した、床単価も投資基準になりますので、周辺との比較や、同築年数の区分中古マンションとの価格比較などを行いましょう。
中古区分マンションの場合は専有単価となりますので、延床単価に比べて高くなることは認識しておきましょう。
出口戦略:売却を見据えた出口想定
数年運用後に売却を目指す場合、出口価格と売却時コストを想定することが重要です。
出口利回りを設定
将来的な市場利回りを仮定し、そこから逆算して想定売却価格を導き出します。
(例:NOI600万円 ÷ 出口利回り6% = 1億円)
仕入れ時に出口付けを検討する場合は、出口利回り以上の利回りで仕入れる必要があるため、周辺相場の把握が大切となります。
また仕入れ時に
売却時のコストを控除
売却仲介手数料や登記費用などを差し引いて、実際の手残り額を計算します。
事業全体の収支を把握
購入時価格・運用中キャッシュフロー・売却益を合算し、
事業全体の収支(IRRやトータルリターン)をシミュレーションします。
出口を見据えることで、途中の修繕や融資返済計画もより精緻に立てられます。
事業全体の想定とまとめ
中古アパート・マンション投資では、
「購入 → 運用 → 売却」までの一連の流れを数字で可視化することが成功のカギです。
- 収入:賃料・副収入・空室率
- 支出:管理費・修繕費・税金
- 利回り:NOIで実質収益性を把握
- 出口:売却価格と最終利益を想定
これらを事前にまとめることで、リスクを最小限に抑えた不動産投資判断が可能になります。
中古物件は価格調整の余地がある一方で、管理や修繕の想定を怠ると大きな損失を招くこともあります。
しっかりとした事業想定を立て、安定したキャッシュフローを確保できる投資を目指しましょう。





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