都市計画の「地域・地区・区域・街区」の違いとは?

マイホーム

都市計画では、まちの使い方や建物の建て方をコントロールするために、
「地域」「地区」「区域」「街区」という4つの単位でルールが定められています。

これらは似たような言葉に見えても、それぞれ役割や指定目的が異なります。
この記事では、初心者でも理解できるように図解と具体例を交えながら、違いをやさしく解説していきます。


test

地域・地区・区域・街区の違いをざっくり整理

区分主な目的代表的な指定例
地域建物の「使い方」や「防火性能」を定める用途地域、防火地域、緑化地域など
地区まちの「形や景観・利便性」を整える高度地区、景観地区、風致地区など
区域都市全体の「安全性や方針」を守る地区計画区域、災害危険区域など
街区小さな単位で「建物配置や容積」を調整特定街区など

都市計画は、広い区域の中に地域があり、その中を地区で細分化し、さらに街区で建物配置を決めていくという階層構造になっています。

以下、それぞれについて説明していきます。


地域とは|建物の使い方・防火・緑化を定めるルール

「地域」は、建物の用途や安全性の基準を決める、都市計画の最も基本的な区分です。
つまり、「このエリアでは何を建てていいのか?」を定めるものです。

用途地域

都市計画法に基づき、土地の利用目的を定めたもの。
例えば「住宅地」「商業地」「工業地」などの性格を明確にするために指定されます。

全部で13種類あり、
・第一種低層住居専用地域(静かな住宅街)
・近隣商業地域(商店街や店舗併用住宅など)
・準工業地域(工場や倉庫が混在できる地域)
といったように、エリアごとに建てられる建物が変わります。

この指定によって、住宅地の中に大型工場が建つような混乱を防いでいます。

↓用途地域に関する詳しい記事はこちら↓


防火地域・準防火地域

火災の延焼を防ぐために、建築物の構造を制限する指定です。
特に駅前や商業地など人が集まるエリアでは、防火地域に指定されることが多く、
外壁や屋根を耐火構造にすることが義務づけられます。

その周辺部は「準防火地域」となり、主要構造部に耐火性能を求めるなど、少し緩やかな規制がかかります。

こうした地域指定があることで、万が一の火災でも被害を最小限に抑えることができます。


特定用途制限地域

用途地域の指定がない場所でも、建てられる用途を制限できる地域です。
たとえば郊外や都市計画区域外に近い場所でも、
「住宅地なのに工場が建ってしまう」といった不都合を防ぐために指定されます。


緑化地域

都市のヒートアイランド現象を緩和し、快適な環境をつくるための地域です。
一定の規模を超える建物を建てる場合、敷地や屋上などに緑化スペースの設置が義務づけられます。
東京や横浜など、環境配慮都市では積極的に指定されています。


地区とは|まちの形・景観・利便性を細かくコントロール

「地区」は、地域指定を補完し、より細かく街並みや建物の形を整えるための指定です。
たとえば、同じ用途地域の中でも「高さ」「景観」「道路幅」などを調整して、統一感のある街をつくる目的があります。


高度地区

建物の高さ制限を設ける指定です。
日照や通風を確保し、圧迫感のない住宅街を維持するために活用されます。


・第一種高度地区:建物の高さを20m以下に制限
・第二種高度地区:建物の高さを31m以下に制限


高度利用地区

土地を効率的に使うため、最低容積率・最高容積率・建蔽率などを一体で指定する地区です。
主に都心部で、オフィス・商業施設・住宅を一体的に整備する際に用いられます。

例:新宿副都心・大阪梅田周辺など。


景観地区・風致地区

  • 景観地区:建物のデザインや色彩、看板の大きさなどをコントロールし、美しい街並みを保つ。
  • 風致地区:自然景観を守る目的で、緑地率や建ぺい率が厳しく制限される。

京都や鎌倉など、観光地や歴史的町並みでは特に重要な指定です。


特例容積率適用地区

幅の広い道路や複数敷地の共同開発など、一定条件を満たすと容積率を緩和できる地区。
再開発プロジェクトや都市中心部での高層化を促進するために使われます。


駐車場整備地区・都市再生特別地区・特定防災街区整備地区

  • 駐車場整備地区:商業施設の駐車台数確保を義務づける。
  • 都市再生特別地区:再開発で街を大きくリニューアルできる特例。
  • 特定防災街区整備地区:老朽建物を防災性の高い建物へ建て替える促進措置。

臨港地区・生産緑地地区

  • 臨港地区:港湾機能を守るための指定。港湾施設以外の建築を制限。
  • 生産緑地地区:都市内の農地を保全するための制度で、一定期間は農業以外への転用が制限されます。

区域とは|都市全体の安全と方向性を示す大きな枠組み

「区域」は、都市全体の安全性や発展方針を示すために設けられた、広域的な指定です。
地域や地区よりもスケールが大きく、「都市全体でどう整えるか」を考える単位です。


建築基準法第22条区域

防火地域・準防火地域の外側に指定されるもので、
屋根材や外壁に準耐火性能を持つ材料を使用することを求める区域です。
これにより、住宅密集地での火災拡大を防ぎます。


災害危険区域

土砂災害や洪水、地すべりなどの危険がある区域で、
住宅など人命に関わる建築物の建築を禁止・制限します。

主に河川敷地近くや崖下などが対象です。


地区計画区域

地域住民と行政が協力し、建築物の配置・高さ・用途などを独自に定めることができる柔軟な制度です。
「自分たちのまちは自分たちで整える」というまちづくりの仕組み。
景観や暮らしやすさを守りつつ、緩やかにルールを調整できるのが特徴です。


高層住居誘導区域・建築協定区域

  • 高層住居誘導区域:都市中心部で住宅供給を促す目的。マンション建設などを推進。
  • 建築協定区域:住民同士が自主的に建築ルール(高さ・デザインなど)を決められるエリア。行政の都市計画指定より柔らかい仕組みです。

街区とは|都市の最小単位で建物配置を計画する

「街区(がいく)」は、都市の中で道路に囲まれた最小単位の土地ブロックです。
住所の「○丁目○番地」にも対応しており、都市計画上の最も細かい単位です。


特定街区

街区レベルでの計画を柔軟にするための指定。
複数の敷地を一体的に扱い、建物の配置・高さ・容積率などを総合的に調整できます。

代表的な事例:
・東京丸の内
・六本木ヒルズ
・大阪中之島 など

この制度を活用することで、開放的な広場や緑地と高層ビルを両立した都市デザインが可能になります。


まとめ:4つの指定で都市を「安全・快適・美しく」

  • 地域:何を建てられるか(用途・防火)
  • 地区:どう建てるか(高さ・景観・整備)
  • 区域:どこをどう守るか(方針・防災)
  • 街区:実際の建物配置を計画する単位

この4つが組み合わさることで、
安全で美しく、暮らしやすい都市空間がつくられています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました