定期借地・定期借家制度が生まれた背景
かつての借地借家法では、借主(入居者)の権利が非常に強く、貸主(オーナー)が土地や建物を返してもらえないケースが多発していました。
土地オーナーは「一度貸すと返ってこない」というイメージを持ち、土地の有効活用が進まないという社会問題が生じていました。
こうした背景から、1992年に「借地借家法」が改正され、期間満了で確実に契約が終了する『定期借地契約』『定期借家契約』が新たに導入されました。
これにより、土地・建物のオーナーが安心して貸せる仕組みが整い、不動産の流動化や都市再生にも大きな役割を果たしています。
普通賃貸借契約との違い
| 項目 | 普通借地(借家)契約 | 定期借地・借家契約 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 借地:30年以上/借家:期間自由(1年以上) | 契約種別により10〜50年など |
| 契約終了 | 更新が原則。貸主からの終了申出は困難 | 期間満了で確実に終了(更新なし) |
| 貸主のリスク | 返還拒否・立退料発生リスク | 期間満了で返還確定 |
| 借主のメリット | 長期安定利用が可能 | 再契約しない限り居住・使用は終了 |
このように、定期契約は更新がない点が最大の特徴です。
定期借地契約とは(借地借家法第22条)
土地を長期間(50年以上)貸す契約で、契約期間が満了すれば、借主は土地を更地にして返還する義務があります。
住宅やマンションの建築に使われることが多く、「定期借地権付き住宅」として販売されるケースもあります。
- 契約期間:50年以上
- 契約形式:公正証書による契約が必要
- 更新:なし(再契約も自由)
- 利用目的:住宅、マンションなど一般利用
メリット(貸主側):土地を将来的に取り戻せる
デメリット(借主側):土地の所有権が得られず、建物の価値が期間満了で消失
事業用定期借地契約とは(借地借家法第23条)
事業用途に限り、10年以上50年未満の期間で貸す契約です。
店舗・オフィス・工場などに利用され、住宅用途には使えません。
- 契約期間:10年以上50年未満
- 契約形式:公正証書による契約が必要
- 利用目的:事業用(住宅不可)
- 更新:なし
- 契約期間を柔軟に設定可能(例:15年契約でロードサイド店舗など)
- 期間満了後は建物を取り壊して更地返還
貸主のメリット:短中期での土地活用が可能
借主のメリット:土地購入コストを抑えて事業展開できる
定期借家契約とは(借地借家法第38条)
建物の賃貸借において、期間満了で終了する契約です。
普通借家契約のように「更新権」はなく、書面(必ず書面!)での合意が必要です。
- 契約期間:1年以上(上限なし)
- 契約形式:書面で締結、更新なし
- 対象:住宅・事業用建物いずれも可
- 貸主が自由に契約期間を設定可能
- 再契約をする場合は新契約として扱う
- 家賃を抑えるなどの条件で借主の需要もあり
貸主のメリット:転勤・帰国予定など、一時的賃貸に便利
借主のメリット:短期賃貸・家賃交渉がしやすいケースも
各契約の比較表
| 契約種別 | 対象 | 契約期間 | 更新 | 利用目的 | 契約方式 | 主なメリット |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 定期借地契約 | 土地 | 50年以上 | なし | 住宅・一般用途 | 公正証書 | 将来的に土地を確実に返還 |
| 事業用定期借地契約 | 土地 | 10年以上50年未満 | なし | 事業用のみ | 公正証書 | 中期的な土地活用が可能 |
| 定期借家契約 | 建物 | 1年以上 | なし | 住宅・事業用 | 書面 | 期間満了で終了、再契約自由 |
| 普通借地・借家契約 | 土地・建物 | 借地30年以上/借家1年以上 | あり | 制限なし | 書面・口頭可 | 借主が長期安定利用可能 |
まとめ:契約形態を正しく選ぶために
定期借地・定期借家契約は、「貸す側が安心して土地・建物を運用できる」仕組みとして生まれた制度です。
ただし、契約方式(公正証書・書面)を守らないと無効となるため注意が必要です。
土地や建物の運用目的(住宅用・事業用・短期貸しなど)によって、最適な契約形態は異なります。
専門家(弁護士・不動産業者)に相談し、自身の目的に最も合う形で契約を結びましょう。


コメント