不動産業界で近年注目されている職種の一つが「アセットマネジメント(Asset Management/AM)」です。
アセットマネジメントとは、オーナー(投資家)に代わって不動産全体の運営・投資戦略を立案し、資産価値を最大化する仕事のこと。
建物の管理や修繕、テナント対応を行う「プロパティマネジメント(PM)」よりも上流の立場で、経営的な判断を担う重要な役割です。
本記事では、アセットマネジメントの基本的な仕事内容から部門別の役割、向いている人の特徴、メリット・デメリットまでわかりやすく解説します。
↓プロパティマネジメント(PM)に関する記事はこちら↓
アセットマネジメント(AM)とは
オーナーの資産価値を最大化する専門職
アセットマネジメントとは、不動産オーナーの代わりに建物や土地といった「資産(アセット)」を戦略的に運用し、価値を高めていく仕事です。
たとえば、テナント構成の見直しや修繕計画の立案、収支シミュレーション、売却や再投資のタイミング判断など、オーナー視点で建物の経営を考えます。
単に「維持する」ではなく、「どうすれば資産価値が上がるか」を考え抜くことがAMの使命です。
プロパティマネジメント(PM)との違い
PM(プロパティマネジメント)は現場での建物運営やテナント対応を行う部門です。
一方、AM(アセットマネジメント)はその上位に立ち、不動産全体の投資戦略や運用計画を立案する立場。
いわば「PMが現場の司令官」であれば、「AMは戦略の立案者」といえるでしょう。
不動産投資の全体戦略を担う役割
AMは投資の入口から出口(エグジット)まで、すべてのフェーズに関与します。
市場調査を行い、投資対象を選定し、運用期間中の収益管理や修繕計画を立て、最終的に売却益を最大化する。
この一連のサイクルを通して、オーナーの利益を最大化するのがアセットマネジメントの役割です。
アセットマネジメントの主な部門と役割
アセットマネジメントは一人で完結する仕事ではありません。複数の専門部門が連携してプロジェクトを動かしています。
オーナーとの折衝・報告業務
最も重要な役割が「オーナー対応部門」です。
オーナーに対して投資計画や収支報告を行い、今後の戦略方針を提案します。
ここでは、コミュニケーション能力とプレゼン力が求められます。
オーナーとの信頼関係を築くことが、安定した運用の第一歩です。
ファイナンス・ローン担当の役割
不動産投資には大きな資金が動きます。
ローンの組成、返済計画、金利交渉、金融機関との折衝を行うのがファイナンス部門の仕事です。
市場金利の動向を把握し、適切な資金調達とリスク管理を行うことが求められます。
管理部隊との連携(ハード面・ソフト面)
AMは現場の「管理部門(PM)」とも密接に連携します。
建物のハード面(設備・修繕・耐震)とソフト面(テナント満足度・クレーム対応)を把握し、長期的な運用戦略に反映させます。
現場のリアルな声を吸い上げることで、より精度の高い投資判断が可能になります。
テナント管理・リーシング戦略
空室を埋め、安定した収益を確保するために重要なのがリーシング戦略。
賃料設定、募集条件、広告媒体の選定、仲介業者との調整などを行い、テナントの入退去をスムーズに管理します。
市場動向を読み、競合物件との差別化を図る戦略力が必要です。
その他の関連部門(市場分析・会計・法務など)
物件の評価や市場データの分析を行う「リサーチ部門」、契約や法令対応を担う「法務部門」、資金管理を行う「会計部門」など、アセットマネジメントは多方面の専門職と連携して動きます。
このように、AMは多職種のハブ的存在ともいえるのです。
アセットマネジメントに向いている人の特徴
数字や分析が得意な人
アセットマネジメントは常に「収益」「利回り」「投資効果」などの数字を扱います。
データ分析やエクセル作業が得意な人、数字を見るのが苦にならない人に向いています。
人との交渉・調整力に長けた人
AMはオーナー、金融機関、管理会社、テナントなど多くの関係者と関わります。
各方面の意見を調整しながら最適解を導き出すコミュニケーション力が欠かせません。
責任感と俯瞰的視点を持てる人
一つの物件に対して「経営者のような視点」で考える必要があるため、責任感と判断力が重要です。
物件の全体像を把握しながら、長期的に利益を見通せる人が向いています。
アセットマネジメント職のメリット・デメリット
メリット①:不動産全体の仕組みを理解できる
アセットマネジメントは投資戦略から現場管理まで幅広く関与します。
そのため、不動産の構造や市場の仕組みを体系的に学ぶことができます。
キャリアの幅が広がり、将来的にはファンドマネージャーやコンサルタントへの道も開けます。
メリット②:高年収・キャリアアップが期待できる
責任が大きい分、報酬も高い傾向があります。
大手AM会社では年収1,000万円以上も珍しくなく、成果に応じてインセンティブが支給されるケースもあります。
デメリット①:責任が重くプレッシャーも大きい
運用成績が直接オーナーの利益に関わるため、失敗は許されません。
常にプレッシャーを感じながら業務を行う点はデメリットといえます。
デメリット②:多部門との調整が多く多忙
AMは社内外の複数部門と常に連携するため、スケジュール調整や会議が多く、忙しさを感じる人も少なくありません。
スピード感と柔軟性が求められる仕事です。
まとめ|アセットマネジメントは「不動産の総合プロデューサー」
アセットマネジメント(AM)は、不動産の価値を最大化するための戦略を立て、実行までをマネジメントする総合職です。
オーナー、金融機関、管理会社など多くの関係者と協働しながら、投資を成功に導くための舵取り役を担います。
分析力と人間力の両方が求められる難しい職種ですが、その分やりがいも大きい仕事。
不動産の世界でより上流の仕事を目指したい人には、アセットマネジメント職は理想的なキャリアパスといえるでしょう。



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